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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


1996年(平成8年)

「『鼻の日』にちなんで」ーアレルギー性鼻炎と蓄膿症ー

筑波大学臨床医学系耳鼻咽喉科助教授 原 晃


 皆さんは「鼻の日」をご存じでしょうか。耳鼻咽喉科医が所属する日本耳鼻咽喉科学会では3月3日の耳の日と並んで、1961年以降8月7日を「鼻の日」と制定し、鼻の病気に関する知識や健康管理について啓蒙を行ってきました。今年で36回になります。
 鼻は呼吸をする通り道である気道の入り口として加湿と空気中のゴミなどを鼻毛で除去するばかりではなく、嗅覚(きゅうかく)や構音機能も担っています。かぜをひいた時に臭が分からなかったり、”はなごえ”になった経験はどなたもおありと思います。
 鼻の病気の代表選手はアレルギー性鼻炎と蓄膿症(副鼻腔炎)です。アレルギー性鼻炎は、近年”(スギ)花粉症”でとみに有名になりました。くしゃみ・鼻水(水様性鼻漏)・鼻づまりで苦労される方も多いのではないでしょうか。スギ花粉は関東地方では実は1月末から3月位までしか飛散しないのですが、抗原性の極めて類似したヒノキ花粉が引き続き飛ぶため1月末から5月の連休明け位まで花粉症で悩まされることになります。このアレルギー性鼻炎は、スギ・カモガヤ(初夏)・ブタクサ(初秋)に代表される花粉症の様に季節の決まったものの他に、一年を通しておこるものがあります。その原因の代表格がハウスダスト(家塵)やダニなどです。花粉にしてもダニにしても日常の生活で完全に遠ざけることは大変難しいことですが、その原因(抗原)が何であるかを知ることは、治療法や予防法をみつける上で大変重要なことですから、お近くの専門医にご相談下さい。
 蓄膿症は以前は大変一般的な病気で、小さい子供が”青っぱな”をたらしていたり、服の袖を拭った鼻汁でテカテカに光らせている光景はいわば当り前のことであった時代もありました。昨今は減ってきている様ですが、よく調べてみると意外に未だに多い病気の一つです。現在は良い薬や治療法が発達してきていますので、手術をしなくてもかなり治る様になってきましたが、放置すると耳・のど・肺などの病気を引き起こしたり、頭痛や視力障害の原因になったりすることもありますので早めに治療しましょう。その他に持続する鼻血や鼻づまり、悪臭のある鼻汁、顔面の腫脹などは腫瘍である場合もありますので注意が必要です。いずれにしても、鼻に何か異常を感じたら、一日も早く耳鼻咽喉科の専門医を尋ねて、治療や生活指導をお受け下さい。

平成8年 読売新聞

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