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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


1999年(平成11年)

「『鼻の日』にちなんで第1回」ーアレルギー性鼻炎についてー

文責:筑波大学臨床医学系耳鼻咽喉科講師 伊東善哉


 日本耳鼻咽喉科学会では8月7日を「鼻の日」と定め,多くの人々に鼻の健康に対する意識を高めていただきたいと考えています.しかしながら8月上旬のこの時期は季節柄,普段慢性副鼻腔炎で治療しているような人もスギやブタクサの花粉症の人も鼻の調子は概して悪くありませんし,子供や若者は遊ぶのに忙しく,1年の中で最も自分の鼻が意識にのぼりにくい時期だと思われます.年輩の方々はと言えば,お盆の準備に忙しく,お供えの「花」の手配について心配したとしても,多少調子の悪い自分や家族の鼻のことは,後回しにしてしまうこともあるでしょう.さらに,耳鼻科にかからなければならないような病気は,大したものではないと信じている人も少なくないようです.今回は敢えてこの時期・状況の中で,3回にわたり鼻の病気についてちょっと皆さんのお耳を拝借いたします.
 まず第1回の今日は,アレルギー性鼻炎について述べ,抗原物質(アレルギーの原因となる物質)を吸入しないようにするのが,治療の第1歩であることを強調したいと思います.近年,鼻に関係した病気で花粉症ほどマスコミを賑わわせている病気はありませんが,これなどは花粉を吸入さえしなければ発症しないわけですし,多量に花粉を吸入してしまえばいくら薬を使っていても十分な効果が得られないことになってしまうのです.花粉症に限らずアレルギーというのは遺伝的な要因が強く関与しており,これは薬を飲んだからといって消えるものではなく,医者の持っている治療手段も限界があることを理解していただく必要があります.たとえば、外出時にはマスクをかけるようにしたり、帰宅時は衣服に付いた花粉を落とし家の中に持ち込まないようにするなどの日常生活の中での工夫が大切なのはそのためなのです.アレルギー性鼻炎の原因物質には花粉の他にダニ,ほこりやカビなどがありますが,やはりそれらを吸入しないようにすることが最も確実で安価な対策といっても過言ではありません.
 私たち耳鼻咽喉科の医師は,鼻の病気から来る不快な症状をできるだけ取り除き,健全な機能を取り戻せるようにするのが仕事ですが,患者さん自身が鼻を悪条件に曝さないように注意していただくことで,効率のよい治療ができると考えています.

平成11年 常陽新聞

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