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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


2002年(平成14年)

「『鼻の日』にちなんで」−鼻と耳との関係について−

文責:筑波大学臨床医学系耳鼻咽喉科講師 大久保英樹


 梅雨時の寒暖の変化が激しい時期は過ぎ去り,今年も猛暑になりそうな気配をみせております。エアコンに冷たいものの飲みすぎや寝冷えなどで体調を崩し,医療機関にかかることの多い季節でもあります。咽頭炎から鼻にも炎症が波及した結果,鼻炎をおこし,鼻づまり・鼻水などもその症状でしょう。夏休みを迎えたお子様がいらっしゃるご家庭では,なおさら健康への留意に勤めているかと思います。しかし,鼻やのどの炎症の経過中に,耳がつまったり,痛くなったりすることでびっくりする方も多いのではないでしょうか。そこで今回は,鼻と耳との関係をご説明したいと思います。

 鼻の奥はのどちんこ(口蓋垂)の裏側になります。つまり,空気の通り道や食べるものの通り道とつながっているわけです。従って,のどが痛い,しゃがれ声になったなど,咽頭炎や喉頭炎を起こしてこじらせてしまうと,粘膜がつながっている鼻へ細菌やウイルスの炎症が波及してしまいます。そして鼻炎をおこし,前述の症状を起こします。

 さて,耳と鼻の奥とは「耳管(じかん)」という細い管でつながっているのをご存知でしょうか。この耳管は小児では太く,短く,真っ直ぐですが,大人になってくるとやや曲がり,かつ長くなってきます。この耳管の出入り口は鼻の奥に開いており,鼓膜の裏側の部屋である「鼓室(こしつ)」につながっています。つばを飲み込んだりあくびをした時などに,「ぱかっ」と耳内で音がするのを経験しますが,これは耳管が開いて耳の中の換気を行っている証拠です。「耳管」は細い管ですが,耳の状態を正常に保つための大切な管なのです。

 鼻炎によって鼻の奥に鼻水が溜まったり,炎症によって耳管の周囲に浮腫(むくみ)がおこると,耳管の機能が悪くなり,聞こえが悪くなったり耳が痛くなったりします。ですから,鼻炎を起こして鼻水が止まらない場合,医療機関にて診察そして処方を受けることも必要ですが,鼻の中の清潔を保つように鼻を適度な強さでかむこと,特に小児ではご両親が鼻を直接口で吸ってあげることは,その後の治療にとてもよいことです。

 お子様をつれて外来にいらした母親に尋ねてみると,汚いのでご自分のお子さんの鼻を吸ったことがないということがよくあります。しかし,現在のように鼻水を吸うための家庭用機器がなかった時代もありましたし,そして我々自身も小さいころは自分の両親に鼻水を吸ってもらいました。安全,確実,またどこでも出来ることから,日常のケアには器械に頼ることなく,お子さんが鼻水が出た時は,ぜひ「ご自身の口で」可能な限り頻回に鼻水を吸ってあげてください。そうすることで鼻だけでなく,耳の健康も保たれると思います。小さなお子様を持つ親御さん,ぜひ実行してみてください。

平成14年 書き下ろし

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