去年とはうってかわって,今年の梅雨は長く,これを書いている時はまだまだぐつついた天気が続きそうですが,体調までぐずついてしまいそうですね。
今まで,鼻の日の話として病気のことを挙げてきましたが,今回は,もっと基本的な「鼻ってどんな構造をしていて,どんな役目を果たしているの?」について,お話したいと思います。
一口に鼻と言っても,解剖学的には顔の真中にある,あの「でっぱったところ」,つまり「外鼻」だけを指すわけではありません。まず,二つの鼻の穴の間には鼻中隔といわれる「ついたて」があります。ついたてに仕切られたそれぞれの鼻の穴からは,大人で後ろ約8センチほど口やのどにつながる通路があります。これを解剖学的には「固有鼻腔」と呼び,単純には空気を吸う通路だと言うことはわかりやすいと思います。
それとはまた別にこの固有鼻腔に2ミリぐらい太さの細い道でつながる,頭の骨の空気の部屋があります。例えば,ほっぺたの骨の中は多くの場合,そのほとんどが空気が入っていますし,同じようなつくりは眉毛の生えている部分の骨の中,目と目の間の骨の中,そして目の奥の骨の中。みな,ほぼ同じように骨の壁を持った「空気の部屋」なんです。この構造も鼻の一部であり,固有鼻腔に対して「副鼻腔」と言っています。つまり,鼻の構造は「外鼻」「固有鼻腔」,「副鼻腔」という大きく3つに分かれます。
それでは,「鼻」はどんな役割を持っているか,箇条書きにしてみます。
@息を吸う
これは最もよく知られている役割ですが,鼻をとおった空気は体にやさしいように,暖められ るだけでなく,加湿された,チリを取ったりして体に取り入れられます。鼻の粘膜を空気がと おると,その中に溶け込む水分は,一日に1リットルにもなるとも言われています。
Aにおいを感じる
これもよく知られた役割ですね。しかし,他の哺乳類と異なり,人の場合はにおいの感覚は長 年の人の歴史の中で退化し,また,刺激にも弱くなってしまって炎症が激しかったりするとす ぐににおいを感じなくなってしまいがちです。
B声を変化させる
声を出すところは,のどの奥のほうですが,特に副鼻腔があると,マ行,ナ行,それに,ン, など,鼻のなかで共鳴する,つまり,鼻にかかる声を作りやすくしてくれます。
鼻というと,日常では「鼻がつまって息が苦しい」など,空気の通り道としか見られない傾向にありますが,この機会に鼻のいろんな役割を興味深く感じていただけたら幸いです
平成15年 書き下ろし