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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


2008年(平成20年)

「『鼻の日』に寄せて」−好酸球性副鼻腔炎について−

文責:筑波学園病院耳鼻咽喉科 村下秀和

 平成11年の「鼻の日」の話題にあります慢性副鼻腔炎(一般には蓄膿症として有名)に関して今年は少し厄介な副鼻腔炎の話をしたいと思います。
 平成11年の記載にもありますように現在は副鼻腔炎の手術治療は内視鏡手術が中心となっています。内視鏡手術のメリットはなんと言っても患者様の負担が少ない(痛くない。入院期間が短いなど)があります。そこで多くの病院で導入されているのですが2000年ごろよりちょっと困った症例があることがわかってきました。それは通常の副鼻腔炎では手術治療によりすっきり完治してしまうのに、すぐに再発をしてしまい、さらに通常の副鼻腔炎で使用する薬が全く効果がないという症例です。その後このような症例は、喘息を持病として持っていたり、市販の鎮痛剤で呼吸が苦しくなった既往がある患者様に合併した副鼻腔炎であることが解明されてきました。そこでこのような副鼻腔炎を「好酸球性副鼻腔炎」として通常の副鼻腔炎と区別することになりました。

 数年前までは好酸球性副鼻腔炎は手術をしてもすぐに再発してしまうことから、「手術適応ではない」という考え方もありました。しかしその後、@内視鏡手術技術の進歩、A好酸球性副鼻腔炎では鼻茸が喘息を誘発することが判明、B術後治療の確立、等があり現在では鼻閉の強い症例、喘息のコントロールが不良な症例では積極的に手術を行う方針となっています。

 好酸球性副鼻腔炎の治療のポイントとしては

@ 手術は通常の副鼻腔炎と異なり非常に困難である。

 理由としてはA:手術中の出血量が多いこと。B:単洞化手術といってすべての副鼻腔を開放しなくてはいけないこと(副鼻腔の外側には眼があり、上方には脳があります。術者としては脳や眼は障害しないように、しかしぎりぎりまでは開放しなくては・・・というテクニックが要求されるわけです)などがあります。


A 術後治療が非常に重要である。

 きちんとした手術をおこなってもやはり鼻茸の再発は多いです。再発抑制に一番効果のある薬剤はステロイドの内服ですがこの薬は副作用も多く長期投与はできません。そこでなるべく再発をしないようにする工夫が必要になります。患者様に毎日ご自宅で鼻洗浄をしてもらったり、点鼻をしたりという外来加療を患者様と協力して行っていくようにしています。

 易再発性である好酸球性副鼻腔炎の患者様は長期の定期的な外来加療が必要になります。私の外来にも多くの患者様に通院いただいております。それでもきちんと病態をご理解いただき協力して加療を行うことにより患者様に「においがわかります」「鼻づまりが楽になりました」「喘息発作が軽くなりました」と言ってもらえると非常にうれしくなります。

このように慢性副鼻腔炎(蓄膿症)と言ってもなかには難知性の症例があり、持病に喘息がある患者様はそのコントロールを悪化させる原因となっていることあります。鼻づまりや嗅覚障害があるかたは気兼ねせず耳鼻咽喉科専門医の診察を受けるようにして下さい。

平成20年 書き下ろし 

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