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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


2010年(平成22年)

「『鼻の日』に寄せて」-鼻洗浄について-

文責:筑波学園病院耳鼻咽喉科 田中秀峰

平成20年の「鼻の日」の話題にあります少し厄介な慢性副鼻腔炎(一般には蓄膿症として有名)のひとつに、「好酸球性副鼻腔炎」というものがあります。治療としては、鼻内内視鏡(カメラ)を用いた手術や内服薬による治療の他に、「鼻洗浄」「鼻うがい」がとても大切です。特に鼻の術後は、鼻ポリープ(鼻茸)が手術により除去されており、鼻内が広がり洗浄しやすくなっているため、術後の鼻洗浄は特に有効となります。

鼻汁にはいろいろな炎症を起こす化学物質が溶け込んでおり、そのまま長期間鼻粘膜にとどまっていると、慢性炎症により鼻粘膜に新たな鼻茸(鼻ポリープ)ができ鼻づまりが悪化、鼻づまりの悪化により炎症を起こす物質が溶けた鼻汁の流れがさらに悪くなり、長期間鼻汁が停滞します。そしてさらに慢性炎症により・・・・・(悪循環)。特に好酸球性副鼻腔炎の方の鼻汁は「ニカワ状」の鼻汁と表現されるように、かなり粘りが強く、高濃度に炎症を起こす物質が溶け込んでおり、通常は鼻かみだけでは排出しきれません。

「鼻洗浄」をやる目的は、上記したようないろいろな化学物質が溶け込んでいる鼻汁を鼻の粘膜から洗い流すことで、鼻粘膜で炎症を起こりにくくすることです。通常の副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎をおもち方、また特に鼻疾患のない方でも、やりすぎなければ鼻洗浄をしても大きな問題はありません。特に好酸球性副鼻腔炎の方は、鼻汁の特徴(かなりネバネバ、高濃度の炎症物質)と、それらの特徴を持つ鼻汁が出続けることから鼻洗浄が必須となり、かなり長期間(ほとんどの場合ずっと)やる必要があります。

鼻洗浄で使う洗浄液は、やはり生理食塩水が最も安全です。水道水ですと、浸透圧の影響や残留塩素の問題で鼻粘膜の障害の危険があり勧められません。浸透圧の調整をする必要があり食塩を加えることが大切です。

【生理食塩水の作り方】 生理食塩水=0.9%食塩水

水1リットル + 塩9グラム(小さじ5mlスプーンで2杯弱)

  水:飲料用の水が望ましい。(地域によっては、スーパーなどで無料で手に入ります!)

  塩:食卓塩(サラサラの塩)

  *小さじ5mlスプーン:1杯で塩5グラム


【鼻洗浄の方法】

いろいろな方法があると思いますが、ここでは写真に示すようなポンプを用いた洗浄方法を示します。ポンプを用いると無理なく比較的簡単にしっかりと洗浄できます。ポンプはいくつか市販されており、一般の方でも1800円程度で購入できます。

洗面所や風呂場などで下を向いて、このポンプで生理食塩水を鼻の入り口から噴射し鼻内を洗浄します。1回に右鼻と左鼻に100mlずつぐらいを目安に洗浄してください。鼻に入った生理食塩水は、鼻や口から出してください。

    


以上、あまりまだ多くの人には知られていない「鼻洗浄」について紹介しました。好酸球性副鼻腔炎の患者様は長期の定期的な外来加療が必要になり、私の外来にも多くの患者様に通院いただいております。きちんと病態をご理解いただき、自宅での「鼻洗浄」などを協力していただくことで、少し厄介な副鼻腔炎ではありますが、可能な限り快適な鼻生活を送っていただければと思います。自分がどの程度「鼻洗浄」が必要なのかについては、まず耳鼻咽喉科医に診察のうえご相談ください。

平成22年 書き下ろし

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