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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


2013年(平成25年)

「『鼻の日』に寄せて」-花粉症と漢方-

文責:水戸医療センター耳鼻咽喉科 境 修平


 もはや国民病でもある花粉症。ある調査によれば罹患率は全国で20%を越えるとされ、最も身近な病気の一つといっても過言ではないと思います。春先になると外に出たくない、布団や洗濯物が干せないとお悩みの方もさぞ多いのではないでしょうか? 

 にっくき花粉症の治療の主体となるのは抗ヒスタミン薬やロイコトリエン拮抗薬に代表される西洋医学の薬です。しかしながら人によっては抗ヒスタミン薬で眠くなってしまったり、効果がでるまでに時間がかかったりする場合があります。あくまでも治療の主体は西洋医学であると考えますが、漢方という選択肢があることを書きたいと思います。

 花粉症で漢方薬というと、まず有名なのが小青竜湯です。市販薬としても売られているこの方剤(=薬のこと)ですが、花粉症の基本となる製剤です。ただ万能というわけではなく、体力が中等度の人で鼻水・くしゃみ型の花粉症に効果があります。西洋薬との併用も可能で、抗ヒスタミン薬では鼻水・くしゃみが抑えられない!といった場合にはとても効果があります。一つ気をつけなければならないのは小青竜湯には麻黄という生薬が入っています。狭心症など心臓が弱い方には向かない薬なので、注意が必要です。 

 体力が衰えている人は小青竜湯ではなく、麻黄附子細辛湯が有効です。体を温める作用が強く、冷え症で鼻水が多いタイプの人によく効きます。ご高齢の方の花粉症の第一選択薬といっても良いでしょう。こちらも麻黄が入っているので注意が必要です。 

 鼻閉型の花粉症には越婢加朮湯という方剤がよく効きます。非常に聴きなれない薬ですが、こちらには石膏という生薬が含まれています。抗炎症作用が強く、体の熱をとる効果があります。花粉症で鼻の粘膜が発赤し腫れている人に有効とされています。 

 上述の方剤では効かない方は大青竜湯(麻黄湯+越婢加朮湯で代用)か大阪の今中先生が御考案された虎竜湯(五虎湯+小青竜湯)の適応となります。 

 いろいろ書きましたが、花粉症の治療の主体はあくまでも西洋医学でよいと思います。ただどうしても西洋医学の薬ではあわない、コントロールできない等あれば、一度試してみる価値は十分にあるかと思います。ただし、漢方薬にも副作用や体質的に飲まない方がよいものもありますので、ご注意頂ければ幸いです。

平成25年 書き下ろし

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