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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


耳の日
the Day of Ear


1997年(平成9年)

「『耳の日』にちなんで」

筑波大学臨床医学系耳鼻咽喉科助教授 原  晃


 皆さんは「耳の日」をご存じでしょうか。耳鼻咽喉科医が所属する日本耳鼻咽喉科学会では8月7日の鼻の日と並んで、1956年以降3月3日を「耳の日」と制定し、日本医師会、厚生省、文部省等の後援を得て耳の病気に関する知識や健康管理について啓蒙を行ってきました。今年で42回をむかえます。
 耳は音を聴くばかりではなく身体のバランスを保つ平衡機能も司り、また顔面神経の通り道でもあります。耳の構造には耳介・外耳道のある外耳と鼓膜及びその内側の中耳さらに聞こえの神経(聴神経)や平衡神経の受容器のおさまった内耳がありそれぞれに病気もあります。
 耳の症状で多いのは耳痛、難聴、耳鳴り等ですが、代表的な病気で少し述べてみましょう。外耳で多い病気の一つに外耳道湿疹があります。この多くは耳の痒みと耳漏(みみだれ)を生じますが、あまりに痒いのでさかんに引っ掻くことで細菌等の感染を招き外耳炎を引き起こすと今度は耳痛や腫れを生じてきます。いずれもこじらせないうちに治療することが大切です。中耳では中耳炎が代表選手ですが、これには幼小児に多く急激かつ激烈な痛みや発熱を伴う急性中耳炎とそれが慢性化し、鼓膜に穴があき難聴と耳漏を繰り返す慢性中耳炎、さらに近年とみに注目されている滲出性(しんしゅつせい)中耳炎(滲中)があります。滲中は幼小児と老人に多い病気ですが、症状が難聴しかない場合が多く、特に幼児では見逃されがちです。これは中耳にマイルドな炎症が生じ液が貯留しており、治療も長期にわたることもありますが、早期に治療を行えば必ず治すことのできる病気ですから小さなお子さんの聞こえには気をつけてみて下さい。内耳の病気には原因不明で突然耳が聞こえなくなる突発性難聴や、難聴・耳鳴り・めまいを繰り返すメニエール病、先天性難聴、老人性難聴、薬物(ストマイ等)による難聴等たくさんあります。なかには治すことの難しいものもありますが、早期治療により治癒あるいは進行の止められるものもあり、一日も早い診断が重要となります。また聴神経腫瘍の様に頭蓋内の(良性)腫瘍もあり、放置することが命にかかわる場合もないわけではありません。紙面の関係上全てを述べるわけにはいきませんが、例えゆっくりと進んでくる症状であっても、なるべく早めにお近くの耳鼻咽喉科医師にご相談下さい。

平成9年 茨城新聞

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