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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


耳の日
the Day of Ear


2000年(平成12年)

「『耳の日』に寄せて 第2回」

文責:筑波大学臨床医学系耳鼻咽喉科講師 伊東善哉


 前回は最も身近な耳のケアについてということで,耳の掃除について述べました.今回は,内耳の病気と内耳を守るにはどのようなことに注意したらよいのかという点について触れたいと思います.
 耳の病気の最も特徴的な症状といえば,当然聴力の低下です.中耳炎に代表される中耳の病気でも起こりますが,中耳だけの異常だけではそれほど高度の難聴になることはまれで,高度の難聴になっている場合はほぼ100%内耳の中の感覚細胞や神経の障害が関与してます.このようなタイプの難聴を感音難聴と呼びます.先天的な高度難聴と言うのは,生まれつき内耳の形成が不良であるためですし,ウィルス感染や髄膜炎に起因した難聴も老人性難聴も感音難聴です.そして,感音難聴は,特殊なものを除いては現在の医学では薬物治療などで改善させることは困難です.「耳の日」というのは,耳の健康に注意を払っていただきたいということで,(社)日本耳鼻咽喉科学会が提唱しているものですが,耳を守ることの真髄はならないで済む感音難聴には極力ならないように心がけることにあると言っても過言ではありません.
 騒音難聴や音響外傷というのはあまりに大きな音を聞いたために,強大な音のエネルギーで内耳の感覚細胞が損傷するのが原因ですから,耳を大きな音に曝さないことが最も肝腎なわけです.突発性難聴という病気もありますが,これはストレスや過労,寝不足などがが大きな誘因になっており,最低限のストレス解消や休養が予防のためには必須です.物理的な外力によって,内耳が傷害されてしまうこともあります.前回,耳掻きの際はは安定した姿勢をとり,近くに子供などがいないときにするように注意すると書きましたが,うっかり耳掻きが鼓膜を貫き,耳小骨が内耳窓からはずれるようなことにことになると,内耳の機能を高度に失う危険があるからです.同様なことは,平手打ちを耳の上に受けた場合や,非常に強く両方の鼻を同時にかんで,中耳の圧力が急速に上昇するようなことが起きた場合にも起こり得ます.
 以上に述べたように少し注意をすれば回避することができるものがあることを認識していただき,生活上の参考にしていただければ幸いですが,不幸にしてなってしまった場合は,早めに耳鼻咽喉科専門医にご相談下さい.このような原因の比較的はっきりしているものは,前述の改善する可能性のある特殊な感音難聴に相当するもので,早期の治療の効果が期待できるからです.

平成12年 常陽新聞


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