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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


耳の日
the Day of Ear


2006年(平成18年)

「『耳の日』に寄せて」−新生児聴覚スクリーニング−

文責:筑波大学臨床医学系耳鼻咽喉科  辻 茂希、及川慶子


今年も子供の健やかなる成長を祈念する雛祭りがやってまいります。今も昔も子供を思う親の気持ちは変わらないと思いますが、近年子供を取り巻く環境は医学も含めてめざましく変化しております。今回は新生児聴覚スクリーニングについてお話したいと思います。

難聴をもつ新生児の頻度は出生1000人に1人ないし2人と言われています。難聴を放置すると言語発達のみならず情緒面での発達にも影響しますので、早期に難聴を発見し、早期から適切な対応を行う必要があります。

近年、測定と解析を自動化した新生児聴覚検査機器が診療応用され聴覚スクリーニングが行われるようになりました。検査は赤ちゃんを出産した産科医院・病院に検査機器がある場合は入院中に行われます。大きく分けてAABR(自動聴性脳幹反応)、OAE(耳音響放射)の2種類が使用されています。いずれも眠っている赤ちゃんに音刺激を入れて反応をみる検査で、痛みはなく短時間ですみます。結果はパス(通過)とリファー(要再検査)という2種類です。パスはその時点での聞こえに問題がありませんという意味です。リファーは再検査が必要という意味のみで、即、難聴を示すものではありません。赤ちゃんの耳の中に羊水が残っていることでリファーと判定されることもあり、実際、リファーと判定された赤ちゃんの約半数が精密検査の結果、結局聴力障害がなかったという報告もあります。数回の検査の結果やはりリファーの場合は、スクリーニングを行った産科医院・病院から新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査機関に紹介していただいて受診して下さい。精密聴力検査機関では更に詳しく聴力の評価を行うことになります。

 リファーと伝えられることは、可愛い赤ちゃんの誕生でほっとされているご両親にとって大きなショックだと思いますが、是非精密聴力検査機関でしっかり検査を受けて納得いくまで説明を受けてください。

また、新生児スクリーニングでパスしても、進行性の聴力障害や、おたふく等に伴う後天性の聴力障害が生じる可能性もありますので、引き続きお子さんの聞こえの様子・言語発達には関心をもって頂きたいと思います。

以上、新生児スクリーニングについて述べてまいりましたが、新生児スクリーニングに限らずお子さんの聞こえなどに関して少しでも「おかしい」と思うことがあれば、気兼ねなく耳鼻咽喉科専門医の診察を受けましょう。

平成18年 書き下ろし

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