補聴器は、音声などを電気的に増幅する携帯型の装置です。その歴史は古典的なラッパ形に始まり、工学技術の進歩に伴い小型化、高出力化してきました。1980年代から耳かけ形、1990年代から挿耳形、2000年からはデジタル補聴器が導入され、新たな技術が開発されてきています。
流通している補聴器は形状から大きく箱形、耳かけ形、挿耳形に分類されそれぞれ長所、短所があります。一番大きな箱形では価格が安く扱いやすい、ハウリング(ピーピー)しにくいのですが、コードが邪魔、衣擦れ音が入りやすいなど欠点もあります。一番小さな挿耳形は目立ちにくく、自然な音質と言われますが高価、操作のしにくさ、ハウリングしやすいといった欠点があります。耳かけ形はおよそ前二者の中間の性格を持っているとされます。最近のシェアは箱形、耳かけ形、挿耳形それぞれおよそ10%、35%、55%です。
さて、これまで補聴器をお求めの多くのかたは聞き取りに不自由を自覚されまたはご家族に勧められ、販売店に直接足を向け、販売店の店員とご相談し難聴に適した機種、どの様な補聴器をするかきめられるケースが多かったのではないかと思います。しかし難聴者の中には早期に治療を要するケースや手術で改善が見込めるケースまた稀ですが聴神経腫瘍などの腫瘍性疾患が見つかるケースもあり耳が遠くなったといってすぐに補聴器に頼ってはいけません。また一口に難聴といっても人それぞれ難聴の程度、高音が悪いタイプや全体が悪いタイプなどいろいろ種類があります。また外耳道(みみあな)、耳介(いわゆる耳)、鼓膜の診察も必須です。したがってまずは耳鼻咽喉科専門医の診断を受けた上で補聴器を購入という形が望ましいと考えます。
耳鼻咽喉科専門医のなかでも補聴器について知識をもった補聴器相談医や補聴器適合判定医といった資格をもつ医師への補聴器相談をおすすめいたします。また販売店側も認定補聴器技能者制度によって一定レベル以上のサービスを行えるよう取り組んでおります。認定補聴器技能者のいる販売店については補聴器相談医や補聴器適合判定医にご相談ください。
今後の高齢化社会で補聴器を必要とされるかたは増加してゆくと推定されます。補聴器は難聴者の生活をより豊かにしてくれるパートナーであります。我々耳鼻咽喉科医が皆様の聞こえのサポーターとなっていきたいと考えております。
平成19年 書き下ろし