今年は年を明けてから雪の日も多く、寒い日々が続きましたが、皆さん体調管理は大丈夫でしたでしょうか。水戸を始めとする県内で梅の花のニュースも聞かれ、徐々に暖かくなってまいりました。
今まで,耳の日の話として様々な話題をとり挙げてきました。今回は,昨年より筑波大学で人工内耳の手術を始めましたので皆様にご報告したいと思います。
人間は生まれてから一生の間に様々な要因で聴力を失う可能性にさらされています。近年では生まれつき難聴を持って生まれてくる赤ちゃんも他の先天性感覚障害に比べ、頻度が高いことがわかってきました。耳は非常に大きい音により障害されることがあり、命を助けるために使われる抗癌剤や、感染症治療に用いられる抗生物質などでも難聴を来たすことがあることが知られています。そのほかある日突然聴力が落ちてしまうような突発性難聴という病気なども皆さん耳にしたことがあるのではないでしょうか。また、人間はいまだ加齢による機能損失を免れることができず、加齢により、難聴が起こってくることもよく知られています。このような難聴の一部では聴力損失が非常に大きくなる方もいらっしゃり、日常生活に非常に不便を感じている方も多くいらっしゃいます。
当院では今までにこのような患者様に、薬物治療ができれば、薬物治療を施行して参りました。また、補聴器での補聴が可能な方に対しては、補聴器のフィッティングを行っております。その他、中耳炎や腫瘍性疾患により難聴を来たしている方に対しては手術治療を施行し、聴力の回復を図る場合もあります。しかし残念ながら、薬物治療、補聴器による補聴、手術により聴力の回復を望めない方もいらっしゃるのが実情です。県内を始めとする患者様からのご要望にこたえるために、当院でも茨城県で初めて、人工内耳の手術を昨年より試行させていただいています。人工内耳手術は聴覚を失った方に、再び“音”を感じていただくことを可能にします。
人工内耳手術はすべての難聴の方に効果があるというものでは決してありません。様々な原因により引き起こされてくる難聴に対して、その治療は当然画一的なものではなく、個々人に合った治療を選択していく必要があるわけです。難聴により日常生活が著しく制限されている方も多くいらっしゃるかと思います。お近くの耳鼻咽喉科専門医を受診の上、原因、病状に合った治療を受けるようにしていただければと思います。
平成20年 書き下ろし