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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


耳の日
the Day of Ear


2017年(平成29年)

「『耳の日』に寄せて」ー鼓膜形成術ー

文責:筑波大学医学医療系講師 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 田中秀峰


 耳は外耳・中耳・内耳の3つに分かれています。入口から耳の穴に入って鼓膜までが外耳、鼓膜の奥にあり空気の入った空間が中耳、骨の中にある聞こえの神経や平衡器官などを内耳といいます。(詳細は日本耳鼻咽喉科学会の図を参照くださいhttp://www.jibika.or.jp/citizens/daihyouteki/jika.html
鼓膜は外耳と中耳の境目であり、音を受け止めて内耳に伝える役割をしています。そのため、鼓膜に穴が開いてしまうと、音が内耳に伝わらず聞こえが悪くなってしまいます。また、外耳と中耳が交通してしまうので感染しやすくなり、耳漏れが出やすくなってしまいます。2005年の耳の日によせてで「鼓膜の外傷」について 辻先生が寄稿しております。今回はその手術による治療法について触れたいと思います。

破れた鼓膜の穴をふさぐ手術を「鼓膜形成術」といいます。大きく分けて以下の二つの方法があります。
@外耳道の皮膚をもちあげて鼓膜を作り直す方法(通常法)
耳の前に切開を加え外耳道の皮膚ごと鼓膜を持ち上げて、鼓膜を作り直す手術です。手術後、一定期間耳の中にガーゼを詰めておく必要があります。筑波大学では全身麻酔で10日前後の入院で行っています。
A鼓膜のみを操作して閉鎖をする手術(接着法)
 耳の後ろを切って鼓膜の材料となる筋膜を採取したのち、耳の中から障子の穴をふさぐような形で破れた鼓膜を補強します。筑波大学では全身麻酔で2泊3日または局所麻酔で行っています。比較的手軽にできる手術ですが、穿孔が大きかったり、耳の穴が曲がっていて穴が見ずらい場合などはこの方法で行うことはできません。

筑波大学では耳用内視鏡を導入し、A接着法の適応を拡大しています。以前では耳の前を切って手術を行わなければいけなかったような症例でも、内視鏡を用いて短期間の入院で行うようにできるようになりました。医学の世界では技術も機械も日進月歩で進歩しています。以前に言われていたよりも負担が少なく治療ができるようになっている可能性があります。
鼓膜に穴が開いているといわれている方は、ぜひ一度耳鼻科を受診してみてください。


平成29年 書き下ろし

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