後の文書 
 前の文書
本文へスキップ

日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


2023年(令和5年)

「『鼻の日』に寄せて」―鼻出血について

文責:井伊里恵子 (筑波大学医学医療系 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教) 

 これまで、耳鼻咽喉科に受診したことがないという方は多くいるかと思います。しかし、鼻出血を経験したことがないという人はあまり多くないのではないでしょうか。鼻出血の原因は、外部要因と内部要因に大きく分類できます。外部要因は、鼻をぶつけたり、鼻腔内を過度に触ったりなどによる刺激があげられます。また、乾燥、特に冷暖房による空気の乾燥も鼻出血を引き起こす要因になります。内部要因としては、高血圧、血液凝固異常、鼻粘膜の炎症、鼻腔腫瘍、などが考えられます。頻度は少ないですが、遺伝性出血性毛細血管拡張症や血友病、肝疾患なども鑑別に考えないといけない疾患です。
 鼻出血の多くは、鼻孔からすぐ近くの鼻中隔のキーゼルバッハ部位から出ます。この部分は、細い血管が網の目のように走っているため、少しの刺激でも傷ついて出血の原因になります。鼻出血があると、慌ててしまい、さらなる血圧の上昇による止血困難を及ぼすことがあります。慌てず、鼻翼(鼻の穴の近くの柔らかいところ)をしっかりと圧迫し、前屈姿勢で、口腔内垂れ込んだ血液は飲み込まず、袋や洗面器などに吐き出す様にすることが大切です。出血源をしっかり10分程度圧迫することで、鼻腔前方からの出血は止めることができます。ティッシュや脱脂綿を鼻に詰めて圧迫をしても問題はありませんが、頻回に交換すると、鼻粘膜を傷つけてしまうので、圧迫を優先させた方がよいです。
 しかし、初期対応を行っても止血が困難な場合もあります。また、繰り返す鼻出血の際は、一度耳鼻咽喉科を受診されることをお勧めします。鼻腔腫瘍は、疼痛などで自覚することは少なく、鼻閉や鼻出血がきっかけで発見されるケースがあります。適切な診察や検査を受け早期に診断、治療を行えるように、気になることがあれば、耳鼻咽喉科医にご相談ください。


2023年 書き下ろし



ナビゲーシ