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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


2022年(令和4年)

「『鼻の日』に寄せて」―鼻腔がんについて

文責:大澤孝太郎 (筑波大学附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科) 

 毎年7月27日は「世界頭頚部がんの日」であることから、日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会では2021年より毎年7月を「頭頚部外科月間」とし、日本における頭頚部がん予防と啓発活動を展開することになりました。その活動の一環として、今回は鼻腔がんについてお話しようと思います。
鼻腔がんと聞くと、そもそも鼻の中にがんが出来るのだろうかと疑問に思われる方も多いかと思います。確かに鼻腔にできるがんというのは非常に珍しく頭頸部領域にできるがんのおよそ7-8%程度とされています。鼻腔がんの厄介なところは進行してこないと自覚症状に乏しく、発見が遅れてしまうことがしばしばあることです。また鼻腔という場所は周囲に目や脳、上顎といった、その人に取って重要な機能を果たし、かつ整容的にも重要な臓器が集まっています。これらに進展してしまった場合は、機能や整容、そしてご自身の予後を天秤にかけなければならず、判断に非常に悩まされます。筑波大学附属病院では、このような患者様に対して、耳鼻咽喉科のみならず放射線腫瘍科、脳神経外科など複数の科で十分協議しながら治療方針を考えます。当然患者様、ご家族様の意思を尊重させていただきつつ、治療方針を決定していきます。実際、患者様の状態に合わせて、手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた集学的治療を行うことが多いです。当院には陽子線治療センターを有しており、目や脳といった放射線をあまり当てたくない部位への照射線量を下げつつ、がんのあった鼻腔内に高線量を照射するという治療によりがんの再発を抑制しています。
今回皆様にお伝えしたいのは、ではどんな症状があったら気を付けなければいけないのか、やはり早期診断、早期治療がその人の予後を最も大きく左右すると言っても過言ではありません。多くの場合、繰り返す鼻出血、鼻閉感、特に決まって片側のみにこういった症状がある場合はもしかするとがんが潜んでいるかもしれません。一度も耳鼻咽喉科に相談したことがない方、忙しくてなかなか病院に足を運ぶ時間がない方も多いかと思いますが、一度近くの耳鼻咽喉科で相談してみるといいかもしれません。



2022年 書き下ろし



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