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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


耳の日
the Day of Ear


1996年(平成8年)

「『耳の日』にちなんで」

筑波大学臨床医学系耳鼻咽喉科教授 草刈 潤


 日本耳鼻咽喉科学会は文部省、厚生省などの後援により昭和31年から、3月3日を゛耳の日"と定めています。この機会に皆様の理解を深めるために、耳の病気について紙面の許す範囲で解説したいと思います。
 耳疾患で生ずる症状には難聴、耳鳴、めまい、耳痛、耳漏、耳閉感などがあります。耳は外耳、中耳、内耳に大別されますが、もっとも外側にあるのが外耳で耳介と外耳道からなります。ここに炎症が生じますと、耳痛や掻痒(そうよう)感などが生じ、また耳垢(あか)多くなると時に難聴も生じます。
 外耳道の最内側は鼓膜になりますが、鼓膜の奥の骨に囲まれた含気腔(こう)が中耳で、ここに炎症があると中耳炎と呼ばれます。まず急性中耳炎ですが、上気道炎に併発する事が多く耳痛や時に難聴が生じます。慢性中耳炎では炎症が慢性化し鼓膜に穿孔(せんこう)が生じ、そこから分泌物(耳漏)が出てきます。炎症が蔓延化したり、難聴がある場合には手術が必要となります。特殊な型としては真珠腫性中耳炎があります。これは真珠腫により骨が次第に破壊されていく疾患で手術が必要です。滲出(しんしゅつ)性中耳炎は特に小児に多く、中耳腔に液が貯留する疾患です。改善・増悪を繰り返すこともあり、根気よく通院することが必要になることもまれではありません。耳の最内側は内耳で音という振動エネルギーを神経に活動に変換する蝸牛(かぎゅう)と身体のバランスを司る平衡器官からなります。蝸牛の障害では難聴・耳鳴が生じ、平衡器官が障害されるとめまいが生じます。この両方が障害される代表例がメニエール病です。難聴・耳鳴・めまいが発作性に繰り返し生ずる疾患ですが、適切な治療を行うと症状が改善または軽快する可能性があります。主として難聴を生ずる疾患としては、特に原因もないのに突然耳が聞こえなくなる突発性難聴、大きな音を聞いたときに生ずる音響外傷、長期に亘り騒音に暴露されている人に生ずる騒音性難聴、原因不明で進行性の突発性感音難聴、先天性あるいは遺伝性の難聴、加齢による老人性難聴などが代表的ですが、他にも多数あります。めまいを主とするものとして突然回転性の激しいめまいが生ずる前庭神経炎、特定の頭の位置でめまいが生ずる良性発作性頭位めまい症、頸に原因のある頸性めまい症などがあげられますが、こちらにも他にたくさんの疾患があります。また、耳の神経から発生する聴神経腫瘍も重要な疾患です。以上の如く耳の病気というのは実にたくさんあるのですが、最初に書きました耳の症状があった場合にはなるべく早くお近くの耳鼻咽喉科医師に相談されることをお勧めします。

平成8年 常陽新聞


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