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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


1999年(平成11年)

「『鼻の日』にちなんで第3回」ー慢性副鼻腔炎についてー

文責:筑波大学臨床医学系耳鼻咽喉科講師 伊東善哉


 「鼻の日」の最終回は,耳鼻咽喉科の病気の中で中耳炎と並んで最も広く知られている慢性副鼻腔炎について述べたいと思います.いわゆる蓄膿症は,この疾患の名です.

 ひと昔前は,慢性副鼻腔炎という診断名がつくと,すぐに手術が必要と考える方が多かったと思います.そしてその手術はと言えば,上唇の裏の粘膜を切って,上顎骨の前壁をノミで削り落として上顎洞内に入り,炎症のある粘膜を残らず摘出してしまう式です.しかし最近は,炎症を起こした粘膜も膿の排出を促し空気にさらしてやれば正常化し得ることがわかり,できるだけ鼻・副鼻腔の本来の構造を保つ形の手術が主流になっています.内視鏡下鼻内手術とか内視鏡下副鼻腔手術と呼ばれる術式で,すべての手術操作を鼻腔内に挿入した内視鏡での観察下に行います.メスによる傷もなく出血も少なく,施設によっては数日以内の短期入院や日帰り手術で行っているところもあります.副鼻腔炎で手術を受けることをためらっている人の中には,昔風の術式を思い描き尻込みされる方がいますが,尻込みする必要はなくなって来ていることを申し上げたいのです.

 もし,この紙面をご覧になって,重い腰を上げられる方がいらっしゃたとすれば幸いに思いますが,一つ注意していただきたいことがあります.それは,何でも大きな病院に行けばよいというのではないことです.往々にして大学病院クラスの大病院は,生命に関わるような重い病気の患者を診ることを専らにしており,副鼻腔炎の患者の治療にまで手が回らなかったり,日帰り手術や短期入院などの小回りのきいた対応ができない場合があります.そこで,お奨めしたいのは耳鼻咽喉科の常勤医師のいる地域病院です.副鼻腔炎のような比較的軽い病気はそのような病院に集まるので,当然副鼻腔炎の手術件数は多く,しかも大病院と違い,担当医の裁量次第で融通のきいた対応ができるからです.何れにせよ,予め電話などで病院に関する情報を収集してから受診されるのがよいでしょう.

 3回にわたり,「鼻の日」にちなんで鼻の病気について述べさせていただきました.今回の記事が多少とも参考になり,皆様が気持ちよく秋の空気を呼吸されることを心から願っております.

平成11年 常陽新聞

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