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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


2016年(平成28年)

「『鼻の日』に寄せて」―鼻腔異物症―

文責:筑波大学医学医療系講師 耳鼻咽喉科・頭頸部外科  田中秀峰

 耳鼻咽喉科の外来診療で、鼻腔内異物は比較的多く遭遇される異物症です。異物症とは、ドングリの実やBB弾、魚の骨などが体の中に入って取れなくなってしまうことです。魚の骨がノドに刺さって痛い思いをした経験は、大人であれば一、二度あるのでは?鼻の異物は、耳やノドの異物に比べてやや低年齢層に多いとされています。10歳以下の子供に多く、特に90%以上が5歳以下の幼児に認められます。異物を入れた当初は、鼻づまりや鼻の違和感程度の比較的軽い症状しかありません。よって、異物を入れた本人が入れたことを訴えたり、入れた瞬間を家族が発見したりしない限り、異物が長期間入ったままになることがしばしばあります。

鼻の異物には、ドングリや豆などの有機物と金属やプラスチックなどの無機物があります。有機物は、異物自体が腐って炎症を起こし、臭い鼻汁や痛みなどの症状が出て、比較的早く耳鼻咽喉科を受診するきっかけになります。しかし、無機物は腐ることが無いため、周囲に炎症が起きにくいため症状が出にくく、長期間留置されたまま数カ月から数年後に症状が出たり、歯科でのレントゲン検査などで偶然発見されたりすることもあります。
 ほとんどの鼻の異物は比較的簡単に外来で摘出できることが多いです。しかし、異物の種類や形、患者さん(お子様)の協力度合いによっては難しい場合もあり、入院して全身麻酔をかけて摘出することもあります。

 また、ほとんどの鼻腔異物は緊急性がありませんが、小型ボタン電池は緊急性があります。近年は、ゲーム機などで使われる小型ボタン型電池が普及し、その鼻内異物の報告が時々あります。ボタン電池は、その電圧と化学反応で鼻粘膜が焼けてしまい、鼻中隔という鼻を左右に分ける壁に穴が開いてしまう可能性があるため、挿入後できるだけ早急に摘出する必要があます。注意が必要です。  
 
 鼻の穴に入りそうな物を子供が触っているときは、子供の動作に注意を払っていただき、もし鼻に何か入れたようなことや、その疑いがあるときは、お近くの耳鼻いんこう科での診察を一度受けてください。

平成28年 書き下ろし



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