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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


2017年(平成29年)

「『鼻の日』に寄せて」―アレルギー性鼻炎に対する新たな治療戦略 舌下免疫療法

文責:筑波大学医学医療系耳鼻咽喉科・頭頸部外科 病院講師 宮本 秀高

今や国民の4人に1人は罹患するとも言われる花粉症に代表されるアレルギー性鼻炎は、『くしゃみ、鼻水、鼻づまり』を主症状とし、作業効率を低下させ、著しく生活の質を落とす要因となっています。アレルギー性鼻炎に対する治療としては抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬などの薬物治療が基本であり、重症例では鼻腔形態改善手術(鼻中隔矯正術、外鼻形成術、粘膜下下鼻甲介骨切除術)や後鼻神経切断術などの手術治療を行う必要もあります。

 近年新しい治療法として舌下免疫療法が保険適応となり注目されています。舌下免疫療法とは名前の通り『舌の下』で行う免疫治療で、病気の原因となるアレルゲンを少量から投与し、徐々に量を増やし体内に摂取し、体質を変えていく治療の事です。根本的にアレルギー性鼻炎を治すことが出来うる治療法で、現在、スギ花粉とダニに対する2種類の治療が行われています。治療効果は約8割程度とされており、2割程度で完治も期待することが出来るとされています。逆を言えば2割程度は効果がない可能性があります。また完全に安全な治療と言うわけではなく、副作用として、アナフィラキシーショック、口腔粘膜の腫脹、びらん、腹痛、嘔吐などの腹部症状、呼吸器症状などが生じる可能性があります。適応年齢としては、12歳以上(70歳未満)で、重症喘息、心臓病、免疫疾患など合併する患者さんは治療を行うことが出来ません。アレルギー検査を行い、スギまたはダニに対するアレルギーが証明され、重篤な合併症がないと判断できれば治療開始することが出来ます。治療は毎日継続して一日一回舌下に滴下または錠剤の投与を行う必要があり、最低でも3年間は治療継続する必要があります。

 これまで長年アレルギー性鼻炎の投薬治療を受けられている方にとっては、根治的な完治を望むことも出来る新しい治療方法の選択肢が広がったと言えるでしょう。舌下免疫治療に興味ある方は是非一度お近くの耳鼻咽喉科に相談することをお勧め致します。 

平成29年 書き下ろし



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