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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


鼻の日
the Day of Nose


2018年(平成30年)

「『鼻の日』に寄せて」―航空性(気圧性)副鼻腔炎 (飛行機頭痛)

文責:田中秀峰 (筑波大学医学医療系 講師 耳鼻咽喉科・頭頸部外科) 

 飛行機で移動中、着陸するときに強い頭痛や目の奥の痛みを感じたことはありませんか?飛行機の離着陸時は、急な気圧の変化があります。顔には副鼻腔といういくつかの空間があり、それぞれに小さな孔があって常に外気と換気されており、副鼻腔内の気圧と外気圧が常に平衡に保たれています(圧平衡がとれています)。何かの原因で、その小さな孔がふさがってしまうと、飛行機に乗り外気圧が変化した時に、副鼻腔内の気圧調節ができず圧平衡がくずれます。この時、副鼻腔に陽圧または陰圧がかかり、粘膜の神経を刺激し、頭痛や前額部痛、時には粘膜組織が一部切れて出血なども起こすことがあります。
症状の強さは、軽い痛みから耐えられないほど強い痛みを感じる場合もあります。
 
  旅客機は高度1万mを飛行中は、機内を圧力調整して約0.8気圧程度に保つようにしております。副鼻腔が十分喚起されていれば問題ありませんが、換気不全で副鼻腔が閉鎖空間になっていると、特に着陸30分程度前ぐらいから高度を下げ始めると、圧平衡が崩れて痛みを生じます。対処法は、着陸の30分程度前から、鼻の粘膜を収縮させる点鼻薬や内服薬を使い、鼻の通りを改善しておくことが予防になります。痛みが出たときは、鼻をつまんで鼻から息を押し出すバルサルバ法というものが効果的です。痛みが残るときは、痛み止めを継角と症状が緩和します。

 同様の気圧変化は耳でも起こり、頻度は副鼻腔の数倍あるとされ、耳痛や頭痛の原因にもなります。圧の影響が、耳なのか鼻なのかを区別する必要があります。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、風邪をひいているときは、症状が出やすくなります。繰り返して症状がある方は、根本的な治療方法もありますので、一度、近医耳鼻咽喉科へご相談下さい。

参考文献: 田中秀峰 Q37 患者・家族への説明ガイド. 耳鼻咽喉科・頭頸部外科(90),p118-119, 2018  

平成30年 書き下ろし



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