耳鼻咽喉科医が所属する日本耳鼻咽喉科学会では８月７日の鼻の日と並んで、１９５６年以降３月３日を「耳の日」と制定し、日本医師会、厚生省、文部省等の後援を得て耳の病気に関する知識や健康管理について啓蒙を行ってきました。今年で４３回をむかえます。
耳の構造には耳介・外耳道のある外耳と鼓膜及びその内側の中耳さらに聞こえの神経（聴神経）や平衡神経の受容器のおさまった内耳があり、音を聴くばかりではなく身体のバランスを保つ平衡機能も司り、また顔面神経の通り道でもあります。
耳の症状で多いのは耳痛、難聴、耳漏（みみだれ）、耳鳴り等ですが、外耳で多い病気の一つに外耳道湿疹があります。耳の痒みと耳漏を生じますが、あまりに痒いのでさかんに引っ掻くことで細菌等の感染を招き外耳炎を引き起こすと今度は耳痛や腫れを生じてきます。こじらせないうちに治療することが大切です。中耳では中耳炎が代表選手ですが、これには幼小児に多く急激かつ激烈な痛みや発熱を伴う急性中耳炎とそれが慢性化し、鼓膜に穴があき難聴と耳漏を繰り返す慢性中耳炎、さらに近年とみに注目されている滲出性（しんしゅつせい）中耳炎（滲中）があります。滲中は幼小児と高齢者に多い病気ですが、症状が難聴しかない場合が多く、特に幼児では見逃されがちです。これは中耳に液が貯留しており、後遺症として難聴が生涯残ることがあり、治療も長期にわたることもありますが、早期に治療を行えば必ず治すことのできる病気です。お子さんのテレビの音が大きかったり、聞き返すことが多くないか気をつけてみて下さい。内耳の病気には原因不明で突然耳が聞こえなくなる突発性難聴や、難聴・耳鳴り・めまいを繰り返すメニエール病、先天性難聴、老人性難聴、薬物（ストマイ等）による難聴等たくさんあります。なかには治すことの難しいものもありますが、早期治療により治癒あるいは進行の止められるものもあり、一日も早い診断が重要となります。また、めまいは耳が原因でおこるもの、脳（中枢）が原因のもの、首の骨（頸椎）の障害でおこるもの、糖尿病等の全身疾患でおこるもの等様々ですが、どこが原因でおこっているものかを診断するのは耳鼻科の仕事です。例えゆっくりと進んでくる症状であっても、なるべく早めにお近くの耳鼻科医にご相談下さい。
平成10年 常陽リビング
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