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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


耳の日
the Day of Ear


2000年(平成12年)

「『耳の日』に寄せて 第3回」

文責:筑波大学臨床医学系耳鼻咽喉科講師 伊東善哉


 これまでの2回は,できるだけ耳鼻科の医者にかからないようにするにはどうしたらよいかという視点で書いてきましたが,最終回の今日は上手な耳鼻科の医者へのかかり方について触れようと思います.
 最近病院や耳鼻科の医院などに行かれた方は(社)日本耳鼻咽喉科学会が作成した「耳の日」のポスターを目にされたかもしれません.よく見ると2行ほど文句が書いてあり,2行目に「耳鼻咽喉科は耳を守ります」と書いてあります.これは学会中枢部の偉い先生方が相談してつくられたものですが,何かおかしな気がします.耳を守るのは皆さん個人個人であり,学会の役割は,皆さんがより効果的に耳を大切にできるよう啓蒙活動を行うことと,有能な学会構成員を育成し,皆さんが医者の手を必要としたときに適切な手助けと治療ができる体制を整えることだと考えます.特に後者は重要で,皆さんが耳の病気にかかってしまったときに,どこの耳鼻科の医者に診てもらっても確かな診療が受けられるのが理想なのですが,実際はそうはなっていないわけで,信頼できる医療機関とそおうでないところと患者さんの側である程度判別しなければなりません.
今の日本の法律では,医師免許さえあれば,専門的な教育をきちんとしたレベルまで受けていなくとも,しかるべき技量を修得していなくても,何科の看板でも掲げることができてしまうのです.たとえば,「耳が詰まった感じがする.」という訴えで受診した突発性難聴(治療の対象となる感音難聴の一つ)の患者さんに,十分な問診や聴力検査をせずに耳管通気に通院させるような医療機関もないわけではないのです.内耳の病気に中耳の治療として用いる耳管通気をしてもまったく無駄であるばかりでなく,適切な治療の機会を失わせ,無駄な医療費を支払わせることになるわけです.
 それでは,しっかりした耳鼻咽喉科の医者を見分けるにはどのようにしたらよいかという話になりますが,結局は評判などを参考にするしかありません.もし十分な説明もなく経過が芳しくないようなら,思い切ってしかるべき病院に紹介状を書いてもらうのがよいと思います.もし書いてくれなければ,診断名を聞き出し,これまでの検査結果や治療内容(投薬された場合はその薬品名も含め)をできるだけ正確にメモしてセカンドオピニオンを他の医療機関に求めればよいでしょう.
 最終回は,医者にとって「耳の痛い」話でした.

平成12年 常陽新聞

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