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日本耳鼻咽喉科学会茨城県地方部会は、茨城県の耳鼻咽喉科・頭頚部領域を専門とする医師が参加する会です。


耳の日
the Day of Ear


2002年(平成14年)

「『耳の日』に寄せて」−めまいについて(良性発作性頭位めまい症)−

文責:筑波大学臨床医学系耳鼻咽喉科講師 高橋和彦


 「朝起きようとしたら目が回ってトイレにも歩いていけなかった。」、「歩いているとふわふわと揺れる感じがする。」、 「横を向いたり下を向くと目が回る」といった訴えをもった患者さんが病院にきます。総合受付で何科にかかったらよいかわからずとりあえず内科の先生に診てもらうこともあるかもしれません。実はめまいの専門科は耳鼻咽喉科です。耳鼻咽喉科がある病院ではめまいに対して検査、治療をしてくれますし、めまい外来といった特殊外来や平衡神経科といった外来のある病院もあります。
 めまいの原因として脳の中に病変がある場合は中性性めまいといって、脳血管障害や脳腫瘍などの生命に関わる危険なめまいもあります。一方で、内耳の前庭や半規管に病変がある場合は末梢性めまいと呼びます。末梢性めまいの典型例では自分や周りのものがグルグルとまわるといった回転性めまいを感じます。また、同時に難聴や耳鳴りを感じる場合もあります。随伴症状として吐き気や嘔吐なども生じます。
 寝返りうった時に頭を左や右に動かしたり、起きあがったり横になったりして頭を動かすと発作性に回転性めまいを生じる疾患があり、良性発作性頭位めまい症といいます。めまい診療で最もよくみられる疾患で、めまい症例全体の10数%を占めるといった報告があります。女性にやや多く、50歳代から60歳代の高年齢層に多い疾患です。難聴や耳鳴りを伴わず自然寛解する疾患ですが、中には難治例もあります。ふらふら感のようなめまいがしばらく続く場合もありますが、平均すると70%の症例で発症から1週間以内で寛解します。原因や誘因のはっきりしないことが多く、内耳の前庭の卵形嚢にある耳石由来の結石が半規管内に迷入し、頭位変化に伴う重力方向の変化により結石が内リンパ腔を落下することにより、めまいが引き起こされるといわれています。
 最近この説に基づいた理学療法(リハビリテーション)が広まり、その有効性が多く報告されています。初回のリハビリで70〜80%にめまいの消失が認められるとの報告もあります。また、30〜50%に再発例があるともいわれています。
 このほかにもめまいを来す疾患としてメニエール病、前庭神経炎、小脳梗塞など多くの疾患がありますが、いずれにせよめまいが続く場合には一度耳鼻咽喉科を受診し適切な検査、治療、指導などをうけることが大切です。

平成14年 書き下ろし

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